不動産競売とは
不動産競売は、債務者から債権の返済を受けられずに困った銀行などの債権者が、債務者の負債を回収するため債務者が所有する不動産や担保物件の売却を裁判所に申し立て、その不動産を差し押さえて、強制的に裁判所の管理下で売却し、その売却代金から債権者が支払いを受ける手続きです。
不況の長期化により戸建住宅、マンション、土地、その他多数の物件が売却に出されており、また裁判所が販売するわけですから、通常は一般市場価格よりも安く購入が出来ます。最近は、一般ユーザーの方からも注目され、多数の購入例が出ています。
不動産競売のメリット
- 価格が安い
- 競売物件の一番の魅力は、物件の価格が一般物件の市場価格より非常に安く提供されている点です。
希望予算では手に入らない地域や環境の土地、建物を手に入れることが可能です。
裁判所の競売手続では、落札後の諸手続も買受人が自分で行う必要があることや物件に占有者がいたり境界等が不明な場合もあることから、最低売却価額については通常の取引価格よりも2~3割程度安い価格で決定されています。 - 裁判所が複雑な権利関係を整理してくれる
- 取引相手は裁判所ですから安心です。落札すれば間違いなく自分の所有に移ります。また、抵当権等の複雑な権利関係が存在しても、裁判所が職権で全て抹消してくれます。
不動産競売のデメリット
- 物件の内見ができない
- 裁判所は不動産を差し押さえて競売を行いますが、当該物件を管理しているわけではなく、差し押さえによって所有者が不動産を使用することが制限されるわけではありません。
このような競売物件の性質上、権利関係や物件状況などを確認する為の直接の物件の立ち入りは困難で、戸建やマンションの場合、内部を見ることは認められず、裁判所に備え置かれる物件ファイルの写真等で判断しなければなりません。 だからこそ、物件に関しては経験・実践に基づいた不動産の専門知識と、また柔軟な思考と目利き能力が重要と考えます。 - 落札前後の手続きは自分で行う必要がある
- 裁判所の競売手続においては、通常の不動産業者が扱う物件のような手続やサービスは行われず、また落札後の諸手続等も買受人が自ら行うわなければなりません。そのためには、経験豊富な専門家が必要となってきます。
- 購入後の明渡しが難しい場合がある
- 落札後に残代金を裁判所に納付すると、当該物件の所有権は買受人に移転しますが、前所有者や占有者等との立ち退きを含めた交渉は、引渡命令に関するもの以外については買受人が自ら行わなければなりません。
そのためには、明渡し交渉のノウハウを持つ経験豊富な専門家が必要となってきます。
競売手続きの流れ
通常行われる期間入札(裁判所が定めた期間内に入札を受け付け、後日開札により買受人を決定する方式)による競売手続きの流れを説明します。
- 競売物件の公示
- 裁判所の掲示場に掲載される「広告書」やファクシミリ情報サービス等で、競売不動産を選択します。
- 閲覧開始
- 裁判所の閲覧室で事件記録(物件明細書、現況調査報告書、評価書)を閲覧します。書類だけでは情報が不十分ですので、現地調査も欠かせません。
- 期間入札開始
- 裁判所より必要書類を入手し、保証金(最低売却価格の約2割)を指定口座へ振り込みます。定められた入札期間内に、入札書と保証金振込証明書を郵便書留もしくは直接裁判所に持参して提出します。
- 開 札
- 開札期日に裁判所の執行官が入札書の開札を行い、もっとも高い金額を提示した人が、最高価買受申出人に決定します。
- 売却許可決定
- 裁判所は定められた期日に、最高価買受申出人に売却を決定します。
- 代金の納付
- 買受の決定した人に、裁判所から代金納付期限通知書が送付されます。残代金の納付期限は、通常、売却許可が決定した日から1ヶ月半くらいの期間が指定されます。残代金を納付した時点で、所有権が移転します。
- 嘱託登記申請
- 代金および登録免許税などを納付すると、裁判所は登記所に対して、所有権の移転登記をするよう嘱託します。買受人による登記手続は不要です。
- 物件の引渡し完了
- 買受人は、引き継がなければならない賃借権等がある場合を除き、旧所有者や占有者に対して不動産の引渡しを求めることができます。不動産の引渡しが受けられないなど一定の場合は、引渡し命令の制度を利用できます。引渡し命令が確定すると、執行官に申し立てて強制的に立ち退かせることが可能ですが、強制執行費用や当該不動産内にある家財運搬・保管費用などが別途かかります。